約束の夜。ルークスは期待と緊張を胸に、妹の部屋を訪れようとしていた。
いよいよ今夜は妹のスバルを抱く。妹も結ばれることを望んでくれた。これをリーリエに打ち明けたところ、応援されてしまったのだから、あとには引けない。
「スバルとふたりだけで、か……」
自制できる自信などなかった。始まってしまえば、本能の赴くままに妹を自分のものにするだろう。それだけ、ルークスのほうにも余裕はない。
実の兄妹で一線を越えること――その背徳感もまた胸を高鳴らせた。妹を抱くという倒錯の快楽を目前にして、早くも興奮しているらしい。
ルークスも一端の男。人並みに欲求があり、恋愛対象にいかがわしい劣情も抱く。
屋敷の廊下はすでに消灯されていた。しかしルークスは夜目を活かし、足音もなしにスバルの部屋まで辿り着く。フェンリル団の一隊長にとっては朝飯前だった。
ノックをしても反応はない。とはいえ、約束通り鍵は開いている。
気配を殺しながら、ルークスは妹の部屋へと忍び込んだ。
「待ったかい? スバル」
部屋はカーテンが閉めきられ、ベッドの傍でルームランプだけが輝いている。
魅惑のシルエットはベッドの上で寝返りを打ち、おもむろに顔をあげた。その瞬間、ルークスは己の浅はかさを思い知る。
「……て、てめえは!」
愛すべき妹が、ビキニパンツの巨漢であるはずがない。
男はゆらりと立ちあがり、それなりに長身のルークスさえ見下ろした。その雄々しい人物こそ、この世界のモラルの番人アラハムキ。
「ルークス=フォン=ジェミニよ。貴様はギリギリのドキドキなどと言って、妹に手を出し、あまつさえBUKKAKEまでしでかした。覚悟はできてるんだろうな?」
最凶の刺客を前にさしものルークスも慄き、あとずさる。
「ま、待て! なんでおまえが、そんなことまで知ってんだよ?」
「問答無用。貴様の身体じゅうに残ってる妹のウフンでアハンな感触など、この俺のギャランドゥで残さず上書きしてくれるわ」
アラハムキは憤怒の表情のまま両手に力を込め、振りあげた。
「ふたご座の国の王子よ、食らうがいい! ギャランドゥ・エクスプロージョンッ!」
瞬く間にルークスの服が裂け、その肌に縮れた剛毛が殺到する。おぞましい感触は衝撃さえ伴い、ルークスを天井近くまで打ちあげた。
「グハァアアアア~!」
一秒間に六十回も毛を擦りつけるという、鬼神のごとき荒技。ルークスの五感は第六感どころか第七感に至るまで、ギャランドゥによって侵食されてしまう。
かくしてジェミニ自治領は震撼することとなる。羅刹をも超える魔人の存在に。
「ハーッハッハッハッハッ!」
ムーディーな部屋の中、豪快な笑声が響き渡った。
BAD END
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